ひみつのはら

 最初に我慢できなくなったのは、さっちゃんだった。

「だって、たっくんがおはなししてくれないんだもん……ッ!」

 さっきまであんな強気だったのに。

 先生に「お互い謝りなさい!」って怒鳴られても平然としてたのに。

 さっちゃんは「うわぁぁぁんっ」って泣き出しちゃった。

 その泣き顔を見て、初めて気付いた。

 ボク、さっちゃんを……ううん。クラスみんなを傷つけてたんだって。

 飛鳥先生も、その後は何も訊かなかった。



 けれど次の日の朝。いつもより早く家を出なくちゃならなくて、チューリップ組には飛鳥先生しかいなかった。

 そして。

「ねぇ、どうしてたっくんはお友達とお話ししないのかな?」

 まただ。黙っていると。

「先生とは、お話ししてくれる?」

 ビックリして飛鳥先生を見た。

 いつ、分かったんだろう。

 ボクがホントは話したくないって。

 でも、気付いてくれたんだ。ちゃんと、ボクのこと見ててくれたんだ。

 そう思ったら、少し楽になった。

 こくん、と頷くと、飛鳥先生は笑った。

「もう1回訊くね。たっくんは何でみんなとお話ししたくないのかな?」

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