ひみつのはら

「でも、本当にいるのかな?」


 ゆかちゃんのおうちの車に乗せてもらって向かっている途中、ゆかちゃんが言った。


「いるわけないよ。訪ねても、誰も出ないし。結構良い家だし、放っておかれてることもないだろうし……」


 それに答えたのは、ゆかちゃんのお母さん。お父さんの方もうなずいてる。


 ――同じことを、ゆうちゃんの家族も言ってた。


 思いきって話してみた飛鳥先生にも、言われた。


 だからなおさら、あたしは思ったんだ。


「みんなそう思ってるから、だれもたっくんを見てないんだ」って。





 ――今まであたしは、自分に自信がなかった。


 自分を信じられなかった。


 だけど。


 今は……少しだけ、信じてみようって思った。













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