子うさぎのお世話

ナツの思い

「………どうなってるのよ……!」



棗は苛立ちを隠せないでいた。


まるで磁石みたいに引き合って離れなかった雪兎と時春が、
あまりにもぎこちない。



それは彼らそれぞれを狙う輩のうちでも噂になっていた。


別れただのなんだのと非常に耳障り極まりない……!


そんなことはあり得ないのよ……!?



あの……文化祭の後。


保健医として時春の従兄弟の藤間英彰が現れたあたりから……


特に時春がおかしい。


雪兎は態度のおかしな時春に戸惑っているのだろう……。


あの保健医は侮れない…と、棗は思った。


時春によく似た美麗な大人の男………。


いつもにこやかに微笑んでいるけれど……、眼鏡の奥の瞳の胡散臭さといったらない。


雪兎をとても可愛がっているようだけど、あの男が雪兎を狙っているのは一目瞭然だ。


蛇みたいな男……。


――ガタ…ッ!


棗は椅子から立ち上がり、教室のドアに向かってまっすぐに歩いた。





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