月と太陽
ふーぅ!と大袈裟に一息ついて後部席に入った萌乃はニット帽を脱いで髪をほどいた。
その後どお?と、運転席に座った可那がハンドルの下から引っ張り出したイヤホンを耳に挿しながら聞いた。
「まだ何も。とりあえず中継を一個代々木辺りに置けば事務所からでも聞けるよ?戻る?」
「そうね、じゃ代々木方面に向かうからリリ指示して。」
「はいはーい。」
機械をいじりながらリリが返事をすると、
━ピルルルル
「電話!!」
イヤホンから聞こえた着信音に可那が反応した。
『接触したみたいだ。いや、大丈夫だ。そのまま猪狩のマンションに向かってくれ。
…ああ、もし奴らがいたら拘束してかまわない。』
三人は目を見開いて合わせる。
うん、と頷いてリリがウエストポーチからケータイを取り出す。
『ああ?ベンツ?どうだろう。女ならとりあえず拘束してもいい。』