月と太陽

萌乃が下を見ると可那が太った拳銃のようなものを上に放って、それを萌乃がキャッチする。
左手で抑えていた1cmほどの薄さの黒い箱を抑えるようにして壁に打ち付けた。
一度それを下に落として、可那はそれをキャッチするに前に缶のようなものを上に放った。

「雑技団みたいだね中国の。」

リリのそれには全くの無反応で、萌乃は受け取った缶を設置した黒い箱に向けてスプレーした。
見る見るうちに黒い箱が外壁と同じ色になりすぐに馴染んだ。

「うん、そんなもんで大丈夫、盗聴も順調、いまトイレから出てきたような音が聞こえるよ。」

萌乃は伸ばした梯子の頂点、5mほどの位置から躊躇なく飛び降りるとスタッという音と共に着地をした。
缶を可那に渡し、伸ばした梯子を縮めて可那と共に車へ向かった。
足早に歩く中、秋の風に髪を揺らされた可那は、何かを電波でも探るかのように北新宿の空を見上げた。
郷愁の犬のようでもあった。

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