恋の病
хххххххххх


彼女は頬杖をついて、白く靄かかった窓ガラスを手で擦って外に見える木々を眺めている。

ケータイから曲を聞く訳でも、メールを打つ訳でもない。ただ、ぼぉ―っと眺めている。

余りにそうしているのが長いものだから、多分彼女を見かけた人は変な奴と思ったかも知れない。俺もそう思った。

しかし否、俺の方が更に変な奴だとすぐに思い直した。

こうして彼女を目で追ってしまっているのだから。

授業中、彼女の悩ましい溜め息にどうしたんだ、と気になって授業に集中出来なくなったり、長いセミロングの髪をたらした背中や、いつも一緒にいる秋好と笑い話をしている所とか。


彼女は俺を一度も見てくれない。
分かってる。無口で暗い、目立つ方でも無いからという事もあるから。これといった特技も無ければ部活に忙しくて、唯一橋下と秋好が教室にいて、話しかけやすい放課後は早々と部室に行かなくてはならないから、何のきっかけも関係も無いままだ。

数日前、ありったけの勇気を出してやっと言えた告白も、ただ迷惑なだけだったのかも知れないな。

頬にできたにきびをかき、大きく彼はうなだれた。


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