最果ての月に吠える
このまま何の疑問を抱かず生きていった僕の姿だった。





「前に働いていた北海道の動物園で、首を吊ったようだ」





いつか彼は僕のたわいない質問に答えてくれた。





「一番好きな動物園か。実家の近くにある朝木動物園だな。ここの園長には申しわけないけど最初の職場だからね。あそこは日本で一番北にある動物園なんだ。





北海道だから冬は雪に覆われてしまう。だけど動物達は逞(タクマ)しい。それを改めて教えてくれた場所だから」





そう話す彼は今までで最高の笑顔をしていた。





それを見ていずれ、ああなるのだろうと思っていた僕の行く先には、死しかないのかもしれない。





まるで真冬の雪原に放たれた、悲しきライオンのように。





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