ねえ…微香性恋愛、しよ?
-確かに、今までかいだ事もない、甘い、良い匂いがした。それが私にとっての初めての麝香との出会い。
私は、むさぼる様にかいだわ。
でもそれは、その匂いが気に入ったと言うよりはむしろ、おじさんの気を損ねない為と、今ある現実から目を背けたいという本能からだった。
ただ、それはおじさんの勘違いを誘うには十分な事だった。-

「あはは、嬉しいなあ。お嬢ちゃんに喜んでもらえて。
あっ、そうだ!お腹すいてないかい?ご飯、持ってきてあげる。」

-もちろん、出て行く時は、見せしめに何か物を痛めつけて出ていった。


…食事を終えた後、すぐに寝る様に私は言われたわ。幸い、その部屋にあったベッドは、とてもふかふかだったので、誘拐されて、不安で仕方がなかった私が、深い眠りにおちていくには、苦労はしなかった。-


「ピアノは弾ける?」

-誘拐されてから二日目の昼、ようやく私は、トイレ以外で、その部屋から出る事が出来た。そしてその屋敷の応接間に呼ばれて、そこでピアノを弾かされた。
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