新パラレルワールド参加作品=The shadows=天才浅海ユウと凡才月星大豆の奇跡的コラボ[企画]
影に侵入され、狂ったように吠えていた犬はすっかり黒くなり、ムクムクとその大きさを取り戻しつつある。
「逃げろ!」
彼女はぼんやりと俺を見返した。
「あんたもああなりたいのかっ? 早く逃げるんだ!」
もう一度俺が叫ぶと彼女はやっと逃げ出した……かに見えたが、
「きゃあっ」
足元の石に躓いて転んでしまった。
捕食が終わった影はまた元通りの大きさになり、活動を再開している。
「危ない、伏せて!」
「?」
こんな緊急時だというのに彼女の動作は緩慢で、さすがの俺もイラッとしながら跳躍し、その体に覆い被さる。
「げぇぇえええっ」
彼女を庇いながら犬笛を吹くと、影は断末魔の叫び声を上げながら消え去った。
「危なかった。怪我はないか?」
俺は覆い被さったまま聞いたが、彼女の様子がおかしい。
青ざめて小刻みに震え、俺の方を見もしないで、あちこちに視線を游がせている。
「ツッ!」
それに、怪我をしたのは俺のようだ。腿が焼けるように熱い。