新パラレルワールド参加作品=The shadows=天才浅海ユウと凡才月星大豆の奇跡的コラボ[企画]

 迷彩色のカーゴパンツは大きく切り裂かれ、血に濡れた所はどす黒くその色を変えている。


「あれは影。この世界を廃墟に変えた元凶だ。あんたも気を付けるんだな。特に夜はロッカーとかの箱の中で寝ろ」


「あ、あ……あの……」


 口ごもりながらも漸く俺を見た彼女と、目が合ってしまった。


───綺麗だ───


 その美しい、名画のような顔立ちに、俺は暫く言葉を失った。


「あの。もう大丈夫ですから……」


 気付くと俺は、彼女にのし掛かったままだった。眉間に皺を寄せた彼女がもぞもぞと身を捩っている。


「ごめん、つい……」


 俺が飛び退くと同時に彼女も立ち上がり、服の埃を払っている。


まるで俺と触れていた場所を、払い清めでもするかのように。


「ごめん、汚してしまったね」


「いえ、もう平気です。ホントに大丈夫ですから」


 思えばかなりの時間、俺は彼女に覆い被さっていた。それを不快に思ったに違いない。


「あ、……影を消すならこれを使え。5分したら復活してしまうけど、その内に隠れる場所を探してやり過ごせばいいから」


 俺は彼女を煩わせたその気恥ずかしさで、大切なブレイブ号の形見を白い手に押し付けてしまった。



< 37 / 170 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop