新パラレルワールド参加作品=The shadows=天才浅海ユウと凡才月星大豆の奇跡的コラボ[企画]
俺が『ない』と呟いた途端、フウカの背中がビクリと反応した。
「そんな筈ない! もっと深く切ってみてください!」
「ほんとにもう、この下には埋め込む場所が無いんだよ、フウカさん」
「そんな……」
彼女は座らせていた椅子から崩れ落ちるように前倒しになる。
「ふっ……ふふふふ」
彼女の口から薄気味悪い笑い声が聞こえてきた。
「私、バカみたい。夫が……あの男が、そんな決定的な虐待の証拠を残すはずないのに……あはははは……ヒクッ……ふふふ……ウゥ……」
彼女は発信器の手術が狂言だったと知り、笑いながら涙を流している。その身体には姿勢を保つ力さえ残っていなかった。
「フウカさん、まだ傷を塞いでない! しっかりするんだ!」
脱け殻のようになった彼女の身体をやっとの思いで立て直して、俺は何とか縫合をやり終えた。