4 X’mas story
クリスマスの夜。

港は静かに波の音が聞こえていた。

各人が松明を持ち、4本の明かりがこそこそとレンディアの船に乗り込んだ。

明かりを消して行動することも考えたが、迅速さを優先し、最短時間で船を港から奪い去ってしまいたかった。

前日からの準備のおかげで、出発までは怖いくらいに手際よく運んでいた。

トーマスが帆を張るために太い綱を思い切り引く。

金塊が積んである貨物室からノエルが出てくる。

「確認した。異常はなしだ」

船の看板の中央にある燭台にも火を灯す。

5本の炎が揺れる。

ノエルの照らされた顔は、赤く涙目になっていて、なぜかインクの染みのようなものが付いていた。

トーマスはもう何かを成し遂げたかのような満足げな顔を浮かべているようだ。

クリスの顔をまともに見ることがなんだか恥ずかしい気持ちになっていた。
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