4 X’mas story
船が動き出したそのときだった。

「お前ら何している!」

がなり声と共に銃声が聞こえた。

しまった。見つかった。

暗闇の中、銃口の先がなんとなく帆を張っているトーマスへと向いているような気がした。

まずい。だが、それをかばうように、ノエルが彼の前に立ちふさがったのを、私はハッキリと見た。

流れ弾では決してない。

彼がトーマスをかばった。

ノエルの体と松明が、命の灯が、暗い海の中に堕ちた。

私たちは必至で身を隠し、船が銃弾の届かないところまで動くのを祈るよりなかった。
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