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PM 12:47 不機嫌と午後の予定





約束通り、ギターの弦はゆっくり吟味させてもらった。


視界に入ったギター本体も思わず眺めてしまい、けれど愛着のある今のギターを使うつもりだしと思い直して楽器屋を出た後、「ほかに買うもんある?」とメグルに聞くと、「ケーキ」と即答された。


予定外に楽器屋で時間を食ってしまったため、メグルは少し不機嫌になっているようだった。

俺がギターの弦を選んでいる時も、暇そうに、読めもしない楽譜を捲っていたし、こちらが目についたギターを思わず眺めてしまっている時なんて、ヤツは曲を聴けるようになっているヘッドホンをつけて、欠伸なんかしてたし。


曲を聴く気なんか、最初からないんだろうって、丸わかりだ。


そもそも、メグルは創造すること以外にあまり興味がない。

よほど自分が気に入ったもの以外には、まったくと言っていいほど関心を示さない。


そんなわけだから、当然楽器屋などに用がなかったメグルは、30分、いやそれ以上の時間、暇を持て余していたのだ。

機嫌を損ねるのも無理はない。

まあ、不機嫌になろうがなるまいが、表情の変化は、言うまでもないけどね。



「はいはい、わかってるよ」


相変わらず眠そうな無表情のクセに、不機嫌オーラだけは一丁前にわかりやすいメグルの雰囲気を受け流すように、俺はそう返事をする。




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