翼を失くした天使の羽音
ズキッ……。


どうして、急にそんな事言うの?



彩人くんの言葉が分からない。


気持ちが分からない。


イライラする。



「……あっそ。それはどーも。じゃ、わたし……教室戻るねっ……バイバイっ」



わたしは、そう言い放って彩人くんに背を向けた。





ふんっ…――何よ!


「天人はイイヤツだよ」だって?


そんなの、わざわざ彩人くんの口から聞かなくても、知ってる。



だって……。
真面目で優しくて。


そんな天人くんを、大好きだったんだから。



あんな風に誰かを好きになったのは、初めてだったんだから。



まぁ…――。
案の定、想いは届かなかったけど……。

それでもっ。
あきらめきれないくらいに、好きだったんだから。



って、あれ?



今、「だった」って……。


これって、過去形に使う言葉だよね?



わたし……自分でも知らないうちに――。


天人くんが、過去の恋になってたの?



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