わがまま娘の葛藤。



「ごめん、ちーちゃん。待った?」

「全然。ごめんね、呼び出して」

「…こんなとこ礼に見られたら、絶対怒られるよ」

笑いながら、そう言う大地くん。
あれからあたしは、聞きたいことがあるといって、渋る彼をなんとか言いくるめ約束を取り付けた。
そして緑色の某大手チェーンのカフェに呼び出し、今に至る。


「蘭とのこと聞きたいんでしょ?それなら、直接礼に聞いたほうがいいんじゃない?ちーちゃんがきっと聞いたら答えてくれるよ?」

「高校時の元カノだってことは、聞いた。でもそれだけ」

あたしだって、礼に黙ってこんなことしたくない。
礼の口から、礼の言葉で聞きたい。
でもそれを礼がしないなら、仕方ないじゃん。


「…いいよ。俺が知ってること全部教える」

そう言って大地くんは話しはじめた。

高校時代、礼や大地くんはサッカー部で、蘭さんはそのマネージャーだった。
美人で気も利いて、マドンナ的存在だったらしい。


「でも、蘭に手ぇ出す奴はいなかった。…礼の女だったから」

“蘭は礼のもの”
それはもう不変の事実で、学校中で有名なカップルだったらしい。

もともと女遊びが激しくて、彼女もころころ変わってた礼が、蘭さんと付き合ってからはそういうの全部やめて、二人が別れる2年後まで、ずっと蘭さん一筋だったそう。


「あいつも言ってた。本気で惚れたはじめての女だって」

礼がはじめて本気で好きになった人。
最低だった礼を変えた人。

だから、あんなに動揺したんだ。
今になって再会してしまったから。


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