花嫁と咎人

「―…嘘。」


「嘘じゃないですよ、ですから…」


私に手を伸ばすアキ。

でも、私はその手を掴み…


「嘘よ!」


そのままぐいっと引っ張った。


「…わ、!」


そうすればいとも簡単にアキはバランスを崩し、落馬してしまって。


「ごめんなさい…!」


だが私は素早くそう叫ぶと無情にも馬に飛び乗った。

目線を下げれば、肘をさすり驚きの表情でこちらを見るアキの姿が。

でも…!


「本当にハイネがそうあなたに頼んでいたとしても!私、ハイネを死なせたくないの…!だからあなたとは一緒に行けない!」


「…お姫様、ちょっと待って…!」


「それに私はこの国の女王よ…、亡命するなんて…女王のする事じゃないわ!」


そして、私は勢い良く手綱を引いた。

そうすれば鳴き声を上げて…馬は勢い良く走り出す。


「お姫様、ハインツ君は――…」


アキが何かを言っているのが分かったが、私はただ一目散に森を駆け抜けた。

馬には少ししか乗ったことが無い。
故に殆どしがみ付くような格好だったけれど…


「―…ブランタンまで行けるかしら。」



もう、諦めたくはなかった。




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