猫と犬はどちらがツンデレ?【MENS企画】

 っは!?

 一瞬完全に思考が停止してしまった。

「もっげがっ──ぶへっ! 結婚だとぉっ!?」

 口に詰まった“わた”を吐き出して、悲鳴にも似た抗議の声をあげる俺。

 だってそうだろう?

 物心ついてからこの方、俺はずっとこのお転婆に振り回されて、こき使われて、無理難題を押し付けられ、休日の意味を辞書を引いて初めて知ったという悲惨な日々を送ってきたこの俺が!

 何をどう間違えば、

「結婚しよう」

 なんていうド直球なセリフを吐くってんだ?

 ありえない。

 引っ張り出せる記憶の引き出しをすべてまんべんなくくまなく引っ張り出してもそんな記憶は俺にはない!

「いつ俺がそんなこといったってんだ!!」

「幼稚園に入ってすぐの頃よ!」





「…………はい?」

 そりゃぁ覚えてないわ。

 無理無理。

“物心つく前”じゃねぇかよ。

 覚えてる方がおかしいわい。

 だがしかし。

 いくらいった本人が覚えてなくともいわれた本人が、しかも恐ろしく融通の利かない人間が覚えているのだから、これはもうどうしようもない。

 嘘かどうかを問いただす必要もない。

 色恋を方便の出汁に使うほど、このレディはこずるくないし、そんな“おつむ”を持ってない。

 つまりは、本当にいったのだろう。

 俺が。

 タイムマシンがあったらば、タイムパラドクスもパラレルワールドもおかまいなしに問答無用でそのときの俺をどんな手を使ってでも止めるだろう、きっと。

 世紀末のベルが鳴り響く。

 俺の頭の中だけに。

 祝福の鐘なんかじゃない。

 絶対に。

 明日から俺のこの世で1番嫌いな言葉は間違いなく、

「自業自得」

 になることだろう。

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