蜜蜂
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「―…杏花」


呟くように彼女の名前を呼んだ。
久々に見た蜂蜜色は、俺の網膜にとても鮮明に映った。


「見つけた…」


杏花はそう言いながら、その場にヘナヘナと座り込む。


「え、杏花?!」


俺は慌てて立ち上がり、彼女のほうへ歩み寄った。
息を切らしながら地面に座る彼女。
中腰になって彼女の肩に触れようとした時、


「なんで」


「え?」


「なんでじっとしてないのよ!」


胸ぐらを掴まれ引っ張られ、そう怒鳴られた。
体勢を崩した俺は、前のめりになってコケる。



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