蜜蜂
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「いっ…」


「なんで大人しく教室にいないの?
校内中探しちゃったじゃないっ。
しかも授業サボっちゃうし、どうしてくれるのよ!」


半ば叫ぶように言う彼女に驚いて、俺は「痛い」と主張することさえできなかった。
ただ目を大きくするだけ。


「だいたい千明は何でも一人で決めすぎなのよ。
どうして相談するとか出来ないの?
私は大丈夫なのに!」


彼女は膝立ちになって俺の胸ぐらを掴んだまま述べ続ける。
その度に頭が揺さぶられ、首がガクガクした。
視界が回る。


「ちょっと聞いてむぐっ」


「ごめんちょいタンマ」


俺は不安定な体勢のまま、また話し始めようとする彼女の口をなんとか手を伸ばして塞いだ。



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