雪のサクラ



携帯を耳に当てソラからの言葉を待つ。

ベランダへと視線を向けた。


寒いせいか窓がくもってよく見えない。

一歩ずつ近づくたびに少しずつ体が冷えていく。

窓にへばりつく水滴をキュッキュッと音を立てながら服の袖で拭いた。


「うわぁ………」


思わず目を見開いた。

水滴を垂らしながらクリアになった窓から見えた景色は

久しぶりに見た雪。


雪は好き。どっちかと言えば桜の方が好きだけど。

北海道みたいに寒い地域じゃないから雪をあまり見ないけど。


久しぶりに見た粉雪は
儚げに舞いながらも桜の華吹雪みたいに舞って


あまりの綺麗さに呼吸を忘れた。


『ん?……どうしたんだよ。うわぁって』

「………ねぇ、ソラ」

『ん?』

「今からそっち行く」

『はっ?!』


ブチっと通話ボタンを押す。

カーテンを閉めお財布とケータイとバックを手にとって


私は無我夢中で家を飛び出した。



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