【短】ラストからスタートするラブ
「…………」


「話がしたい」


何も言えないで目を泳がせていると、力強い声がもう一度聞こえた。


「……真希、あたしら先行ってるから、終わったら連絡ちょうだい?」


「実湖…」


あたしの迷う気持ちを察した実湖が、優しく背中を押してくれた。


何の話なのか、聞いた後に何が起こるのか、分かることは一つもないけど……

あたしも前に踏み出す時期がきたのかもしれない。


「先輩、分かりました。少しだけなら」


返事をすると、ホッとしたような優しい表情に変わった。


付き合ってた期間は一ヶ月にも満たなかった。

だから、”先輩”って呼び方のままだったし、ずっと敬語だった。


一つ上なだけなのに、あの頃はその小さな壁すら越えられなかった。

きっと先輩は気にしてなかったのだろうけど。
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