氷の壁 -あなたとの距離- 【中編】
・・・しばらくして、彼女がこっちを見た。
真剣なまなざしで。
「・・・あなたは、聞かないのね」
「え?」
「さっきの人の事・・・」
悲しみと安堵と緊張が混じったような表情をわたしに向ける。
そんな彼女は今までにないくらい弱々しくて。
「聞かないよ。1m未満にまだなってないもの!」
下手なくらい元気に言ってみた。
すると高浪さんは少しだけ笑みをこぼして、何か言った。
聞き取れなかったので、何?と聞き返すと何でもないわ、とはぐらかされた。