少数派の宴
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その頃。
盲目の老婆の前で、<トカゲ>は息の詰まる思いをしていた。
老婆は見えない筈の白く濁った目を、確実に<トカゲ>に向けている。
「……何なんだよ」
沈黙に耐えきれず、『トカゲ』はそう尋ねた。
急に呼び出されたと思えばこれだ。訳が分からない。
ただでさえ、村人にあの<トカゲ>が“魔女ババァ”の家にいると知れたら、また陰口を叩かれるというのに。
「何、あたしの友人が来るんだよ。あんたに会いたいと言うんでね」
「会いたい? 僕に?」
驚いて聞き返してから、<トカゲ>は老婆を睨んだ。
「人を見世物にするなよ」
老婆はそれを軽く嘲笑する。
「あんた、見世物にするほど素敵な容姿かい?」
「……見えていない癖に」
<トカゲ>はふい、と老婆から顔を背ける。
老婆は魔女のごとくに甲高く笑った。
「見えちゃいないが分かっているさ。安心しな、あたしの客はそんな奴じゃあないよ」
「じゃ、どんな奴だ」
言った後すぐ、がたがたがた、と窓が揺れた。
続いて、エンジンを吹かす暴力的な音。
「――――はん、あんな奴さ」
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