ロバの少女~咎人の島
最後の鯨とり

レンは日が落ちるまで鯨の上で横になった
冷たい風も幾分か和らいできた頃だ
昼間の日は暖かく
風も柔らかくなってきた

もうすぐ島にも春がくる


夜になると
とたんに空気が冷たくなった

ミキはやはり手ぶらで桟橋にきた

鈴は見あたらなかった

島に来た頃には肩より短かった髪は
いつの間にか肩よりも長くなっていた

「レン」

レンは桟橋につないだ縄を切った

「もういい?」
「別れを言う人いないから」

トッコはきっと会ってくれなかったんだろうな
レンは、想像の中に二人を並べた

「わかった」

船はゆっくり進みだした

島が遠くなっていく
そのとき、桟橋に赤い光といくつかの影が揺れた

見送りに来ていたんだ

ミキは一度も振り返らなかった
鯨の上には静寂と水の音が響いていた

長い長い沈黙だった

たくさん話そうと
息込んでいたような気がする

実際は
何も話せなかった


長いこと黙っていたのに
その沈黙はなぜか懐かしく、心地が良かった

世が、目の前に前に見えてきたときミキは言った

「レン、ありがとう」

世の船着き場には、たくさんの影がうごめいていた
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