愛してるさえ、下手だった


午前2時。
にぎやかだった街は静まり返り、人の声どころか車の音も聞こえない。

独りじゃなくなったことに安心して熟睡している満希を見つめる。
仮にも殺し屋の隣で、よく眠れるものだ。

ベッドカバーの下から普段はほとんど使わない拳銃を取り出し、服の下に隠し持つ。

「…ごめんな」

俺はこれから、またお前を独りにするかもしれない。

彼女の首筋に顔を近づけ、触れるだけのキスをする。
もっと彼女に触れたい。
ずっと触れていたい。

だけどこのまま俺が何もしなければ、その願いすら叶わない。
命を落とすかもしれなくても、やらなければいけないんだ。

時計の秒針の音がやけに大きく聞こえる。
窓の外では、いつもより星の輪郭がくっきり見えた。



お前を大切だと想うから

俺は行くよ



< 67 / 79 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop