愛してるさえ、下手だった


旭の姿がぎりぎり見えるぐらい遠い所から、あたしは旭を追いかける。
旭はあたしに気づいていないのか、暗い路地裏へ入っていった。

いつもは意識しない街の静けさが、やけに体に刺さる。

何だか嫌な予感がした。



「急に呼びだしてどうした、777」

旭のものではない誰かの声を聞いた瞬間、心臓を鷲掴みにされたような気がした。
唐突に息が詰まって、呼吸の仕方がわからなくなる。

何とか落ち着こうと胸に手を当てて深呼吸をしていると、

「報告に来たんだ。この前依頼された男は殺してきた」

聞き間違えるはずもない、旭の声。
あたしの彼氏だった人を殺したと言った彼。

目の前でその光景を見たわけではないから実感がわかなかったけれど、やっぱり本当のことだったんだ。

報告に行くということは、もう一人の方はボスか何か、だろうか。


「ご苦労。…それで?」

「は?」

「とぼけるな。もう一人の女はどうした」

背中をナイフの先でなでられるような、残酷な緊張感。


あたしのことだ――。

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