愛してるさえ、下手だった


路地裏を出た所で旭が深く息をつき、肩の力を抜く。
脱力したのはあたしも同じだった。

見上げた空は青く、平和だった。
明るくて平和な世界を、あたしたちは今まで見過ごしていた。

こんなに近くにあったのに。


「満希…」

旭があたしの首筋に顔を埋める。
触れた首筋が、涙で熱く濡れた。

なんで来たんだと彼は責めなかった。

「俺のせいだ。俺のせいで、こんな」

あたしの肩を見ながらそう言うから、何だか申し訳ない。
飛び出したのも撃たれたのも、全部あたしが悪いのに。

「だってあのまま飛び出さなかったら、旭が撃たれてた」

「俺は、満希が撃たれることの方が苦しい」


心配かけてごめんね。

そう言うと、旭は緩く首を振った。


「…愛してる」

「うん、あたしも愛してる」


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