夜色オオカミ




『…………!』



その美しく幻想的な花畑の真ん中に



あたしの瞳は佇む黒い大きな獣の姿を捉えた。



天からは月の光を浴び



地からは月の光に輝く白い百合の光を浴び



その中心で黒き狼が発光でもしているかのように輝いていた。



あたしはその美しい獣の背に向かって必死に手を伸ばす。













『十夜………!!』



『…………。』











獣はその声にピクリ…と反応をして



まるでスローモーションでも見ているかのようにゆっくりと振り返った…………。












『…………!!?』













振り返った獣の口には



ぐったりと四肢を投げ出す狼がボタボタと血を流し…力無く首をくわえられ…………



足元には――――



無数の狼が血まみれで横たわっていた―――――










黒い狼があたしを見つめ



――――ドシャ……!



食わえた狼を乱暴に放り投げる。



あたしに向かって











『……………!?』










その口が開かれた時――――












あたしは



鮮血とは別に











――――赤黒く染まった鋭い牙を見た。













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