夜色オオカミ
あんた、やっぱりあたしを知ってるでしょ?
黒い瞳がそう言ってる。
真神十夜はあたしの隣の席について、長い足を優雅に組んで頬杖をつき前を見てる。
それがムカつくくらいさまになってて…ほんとに、腹が立つ。
「………どうなってるの?」
だけどあたしは出来るだけ冷静な声を出してみせ、頬杖をついたままこっちに余裕の笑みを向ける男に小声で聞いた。
――――あたしだけ焦ってるなんて悔しいから。
「さぁ……何のこと?」
でも真神十夜はまるで面白がってるみたいにはぐらかして、あたしの質問に答えをくれない。
「だって…なんで…っオオカ……っ…ムグ…!?」
答えをくれない男に焦れたあたしがついに声をあげると
真神十夜が素早く大きな手であたしの口を塞いだ。
じろりと睨めば、真神十夜は形よい唇に長い指を立てて微笑み…静かに…と、瞳であたしに言った。