夜色オオカミ
「驚かせてすみません…姫君。…私です。
この姿の方が五感も研ぎ澄まされますので。」
貴女を守れる…夕陽色の狼の橙枷さんはあたしを威かさないように伏せたまま気遣ってくれているような優しい声で言った。
「大丈夫…です…。」
座り込んだままその鼻先にそっと手を伸ばした。
突然の登場に驚いたけれど、目の前の狼がよく知ってる橙枷さんだと知れれば、むしろ安堵すらする。
涙に濡れた頬を拭くこともなく、あたしは橙枷さんの瞳を見つめた。
橙枷さんはそんなあたしを見つめ返すとほんの少し痛ましそうな瞳をして、あたしの差し出した指先に額を擦り寄せた。
まるで、慰めてくれているかのような仕草で…。
ふわりと温かな感触が手の平に伝わる。
温もりにまた視界が揺らぐ。
「……っ……十夜……!!」