いちごいちえ




「雨、やまねえなー」



雨の音に混ざるように、瑠衣斗の呟いた声が聞こえる。



あの時の記憶をすり替えられるのなら、全て瑠衣斗で埋め尽くしてしまいたい。


でも、そんな事はできないし、私は受け止めなきゃいけないんだ。



時間が流れ、笑い話になんてならないけれど。



こうして毎年、るぅがそばにいてくれるよね?


一緒に思い出してくれるよね?



「また、みんなでたこ焼き食べたいね」



「…そうだな」



顔をあげると、優しく笑ってくれる瑠衣斗の笑顔がある。



ほろ苦いモノが胸を刺激して、くすぐったさに口元が自然と緩む。


優しく頬を撫でられると、ゆっくりと瑠衣斗の顔が近付いてきた。



触れるか触れないかの所で、瑠衣斗がぐっと私を引き寄せる。


力強くも優しく、そんな瑠衣斗に唇を塞がれた。



瑠衣斗の体温が、私に全て伝染するように、全身を熱くする。



苦しい程のキスに、頭の芯がほんやりとしてきてしまう。



「ふ、ん…」



次第に甘く漏れる私の吐息は、瑠衣斗の物と重なり合い、拍車を掛けるように鼓動を激しくする。



熱いくらいの瑠衣斗の体温と、求め合うようなキスに、いつの間にか夢中にさせられていた。


もっともっと、瑠衣斗を感じたい。

離れたくない。

溶けて混じって、くっついちゃえばいいのに。



そんな中、瑠衣斗の大きな手のひらが体のラインをなぞった。


途端に身じろぎした私を、逃がさないように抱き寄せると、瑠衣斗はそのままその手を止めなかった。
< 166 / 251 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop