いちごいちえ
ピクリとも動かない瑠衣斗に、私は恐る恐る口を開ける。
「るぅ?電話…」
だが、そんな私の言葉に顔を上げたかと思うと、私の首筋に顔を埋めてしまう。
不意を付かれた私は、くすぐったさと突然の事に、体がピクリと反応する。
「ふあっ…る、う…電話!」
「ん。無視決定」
「ちょ…るぅダメだよっ…」
「ダメじゃない。俺がダメ。今、猛烈にももが欲しい」
熱い吐息と共に、耳元で囁かれる甘い言葉。
目眩を起こしたようなクラクラする感覚に、胸が切なく苦しく縮んだ。
しばらくすると、着信音は止み、部屋の中にはシーツが擦れる音と、ベッドが軋む音、そして、雨音だけが残った。
丹念に私の体を解していく大きな手のひらに、頭がぼんやりとする。
でも、意識だけは異様な程、瑠衣斗を求めて止まない。
だが、再び鳴りだした着信音によって、そんな意識も吹き飛ばされてしまった。
「………」
「あ…えと……るぅ?」
「…なんなんだ。あいつら。俺に修行でもしろと…?」
今度こそ動きを止めた瑠衣斗は、脱力するように私に寄りかかる。
そんな瑠衣斗が可愛く思えて、全身で受け止めた私は、瑠衣斗の頭を優しく撫でてあげた。
そして、瑠衣斗の予想通り、着信の相手は身内であったのだった。
『どーもー!!ホテル神崎でっす!!延長しますか〜♪』
龍雅…朝から何でそんなにテンション高いんだろう……。
これじゃあ、るぅ怒っちゃうよ。
そんな事を思いながら、不機嫌そうな瑠衣斗の言葉を待った。
「……宿泊で」
「え!?」
『えーー!!!!』
「……え?」
だだ漏れの龍雅の声とハモり、そんな私の言葉にキョトンとする瑠衣斗。
そして、
『るぅが!!るぅが!!るぅが…お…こ、壊れてる!!』
と、全力で漏れてくる龍雅の声だった。