いちごいちえ
「何だ。朝から失礼な奴だな」
呆れたように、瑠衣斗が低い声で龍雅に凄む。
るぅが龍雅の冗談に乗っかった……。
何か……貴重な瞬間に居合わせたみたい…。
いつもなら、バッサリ切っちゃうのに。
『そうか。そーゆう事か。なるほど、なるほど』
「勝手に納得してんなよ」
『無粋な事は言わないさ…。とりあえず、集合じゃ!さらばニダ!!』
「はあ?おい待て………ニダって何だよ」
…そこ?そこなの?
と、思わず突っ込みたくなる衝動を抑え、顔が緩んだ。
「何笑ってんだよ」
「え?笑ってる?」
明らかに不機嫌そうな瑠衣斗が可笑しくて、そんな表情をする瑠衣斗が可愛くてたまらない。
枕元に携帯を投げ出した手が、そのまま私の頬に伸びてくる。
そのまま目で追うと、キュッと頬を摘まれた。
「ひょっ…ひょっと…なにふんろよ」
「八つ当たり」
ムスッと顔をしかめたかと思うと、ふわりと笑って見せる。
摘まれた手が離されたかと思うと、そのまま優しく頬を撫でた。
暖かい手のひらと、私を眩しそうに見つめる色素の薄い瞳が、私の心を掴んで離さないんだ。
「仕方ない。起きて準備しないとな」
「…うん。るぅがまた龍雅にいじめられちゃうしね」
「いじめ…よりたちが悪いだろう」
再びそんな言葉に笑いながら、私と瑠衣斗はようやく広いベッドから抜け出したのだった。