嘘とビターとブラックコーヒー 【短編】
月菜ちゃんは餌を見付けた猫みたいに目をギラギラさせて、私の手を取った。
「優梨ちゃんの失恋相手は知らないけどね、海斗の言う通りだと思う!大事なのは、新しい恋だよ!」
あまりの迫力に気圧されて、私は半ば強制的に頷くことになった。
……でも、月菜ちゃんはほんとにすごいなぁ。
クラス中の人に聞こえる大きな声で、呉暁くんに告白して。
私ならそんな大々的な告白、無理だもん。
『話を聞いてくれてありがとう、月菜ちゃん』
「ううん!いつでも聞くよ!」
『ふふ、助かります』
こういうの、恋話って言うんだっけ。
灘谷くんが好きだった頃は、七鴇さんの親友の月菜ちゃんにまさか言えるわけがなかった。
今はすんなり話せるのを思うと、新しい恋も良いんじゃないかと思えた。
……夜錐先輩が好きなのか、花寐先輩が好きなのか、いまいちわからないけど。
『(どっちかわからないのは、本気で好きじゃないからだよね…)』
今日から始まる送別会の準備期間で、なにかが変われば良い。
灘谷くんを視界に収めながら、そんなことを心中で呟いた。