ため息に、哀
猛獣なのか、飼い猫か

「潤ってさ、高橋先輩のこと好きだろ」


唐突なその言葉に、お茶を飲んでいた俺は盛大にむせた。

部活後に薄と一緒に帰っていたら、いきなり言われたんだから驚いて当然だ。



「ばっ、なっ・・・ち、ちげーし!」


お茶を口から吹き出しながら否定した俺を見て、汚い、と薄が顔をしかめた。

悪いのは俺じゃないのに。

タイミングも読まずに言ったお前が悪いんだからな。


ちなみに薄とは、中学から同じバスケ部だ。

こいつは俺なんかとは比べ物にならないくらいバスケが上手い。

無口だと思われがちな薄だけど、俺の前ではわりとよく喋る。

でもうるさくないし、ちょっと冷めてるようなところもあるけど、すごくいいヤツだってことはわかってる。


「違うし! 本当に違うからな!? 高橋先輩が俺なんかを相手にしてくれるわけがないんだから、好きになるだけ無駄だろっ」


否定の言葉を重ねてみたけど、どうしてだろう、嘘くささが増していく。

完全に、薄にバレた・・・。

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