ため息に、哀

身のほど知らずも甚だしい、なんて薄も思うんだろうか。

望みもないのにバカなヤツって。

そんなこと、俺が一番よくわかってるよ。


「無駄なんて思わないけど」


でも薄は笑わなかった。

からかうつもりで言ったんじゃないことはわかってたけど。

笑わずにいてくれたのが嬉しかった。


まあ、その直後に突き落とすのはやめてほしかったけど。


「高橋先輩、あんな顔して猛獣みたいなところあるから気をつけろよ」


血統書つきのペルシャ猫みたいな高橋先輩のことを、薄はそうはっきりと言った。

猛獣って・・・。

どうして薄がそんなことを言うのかはわからなかったけど、一応肝に銘じておくことにした。



それが、二月の終わり。

気づけば、春はもうすぐそこだった。

先輩たちが引退する、春は。



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