ため息に、哀
そんな風に一喜一憂しながらも、俺は俺なりに満足しながら穏やかに生活していた。
・・・と言うとゆるやかに、でも順調に高橋先輩との距離を縮めていっているように聞こえるけど。
実際は、なにも行動を起こせないまま時間が過ぎているだけだった。
廊下ですれ違ったら挨拶をして。
部活中にさりげなくその姿を目で追ったりして。
たまに微笑みかけられたら、その日はずっとそれを思い出してニヤニヤしたりして。
そんなのでも、それなりに俺は満足していた。
というか、これ以上踏み込んで、近づくのが怖かった。
もうこれ以上近づいてはいけないなにかが、高橋先輩にはあるような気がしたから。
その笑顔は、危険信号。
触れさせようにする壁。
それは誰かを傷つけないようにする優しさでもあって。
それでも、ボロボロの姿を知っている俺は、その優しさが痛かった。