ため息に、哀

皇ヶ丘学園といえば、バスケをしてる人なら誰でも知っているような、バスケの名門校だ。

しかも幼稚舎から大学院まであって、偏差値もものすごく高くて、東大の予備校とか言われてるんじゃなかったっけ。

それより何より、薄のライバル、黒木が通っている高校のはずだ。

確かにそれなら俺らよりもバスケのことをよく知っているだろうし、プレイの技術も身体能力も、俺なんかとは比べ物にならないだろう。

ついでに、頭があれだけいいのも納得だ。


でも、そんな人がどうしてこんなところで、プレイヤーじゃなくマネージャーをしてるんだろう。

みんなの疑問を、岡田先輩が代表して訊いてくれた。


「じゃあなんでそんなすごいヤツが、俺らのマネやってるんだよ」


みんなの視線が薄に集まり、その答えを待った。


「高橋先輩は・・・・中学時代、膝を故障してバスケができなくなったんですよ。手術しても今までのようには動けないって宣告されて、プレイヤーとしてバスケに関わることができなくなったんです。
それだけ能力があって期待もされていただろう人が、いきなりバスケができなくなる気持ち、俺らにはわかりません。でも、怪我をして試合に出られなくなった稲垣先輩の気持ちを、一番理解できるのは高橋先輩です」


最初は言いよどんでいたけど、なにかを決意するように薄は語った。


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