楽園の炎
「ああっ! 言ってしまったわ! どうしましょう、恥ずかしいっ!!」

ぽかんとしている朱夏の前で、ナスル姫は一人で悶絶している。

朱夏はとりあえず、カップに視線を落とした。
色は悪いが、香りは良い。
一口、含んでみる。

「あ、意外に美味しい」

また思わず出た言葉に、ナスル姫が上目遣いでちらりと見る。
そして、そっと自分のカップを持ち上げた。

「甘くしなかったら、何だか酸っぱいけど、お砂糖いっぱい入れたら、なかなか美味しいでしょ?」

言いながら、こくりとお茶を飲む。

朱夏は焼き菓子を頬張りながら、今までのナスル姫の行動を思い返してみた。
あくまで朱夏のわかる範囲でだが、ナスル姫と、そう言葉を交わすほどの間柄の男など、かなり限られてくる。

しかも、ここ最近と姫は言った。
となれば、必然的に一人に絞られてくる。

朱夏は難しい顔になった。

ナスル姫は、朱夏の一つ下というから、十四歳だ。
夕星から、頼りがいのある人間に惹かれるだろうとは聞いていたが、外見や年齢に、こだわりはないのだろうか。

しかしそう考えると、このお菓子作りの上達ぶりも、説明がつくのだ。
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