楽園の炎
「確かにこれ飲んでからご飯食べたら、もたれなくていいんだけど、楽に食べられるから、量が増えちゃう。太っちゃいそう」

「随分お痩せになったのですから、少々太ったところで、問題ありませんよ。大体殿方というのは、痩せぎすな女子(おなご)よりも、ふくよかなほうがお好きなのですよ。夕星様のためにも、もう少し太るべきです」

言い合う二人に、炎駒は柔らかい目を向ける。
アルが、失礼しました、と、さがってから、朱夏はもう一度、部屋を見渡した。

「父上。桂枝は? いないなんて、珍しいじゃないですか」

「うん、それなんだが」

炎駒はカップを置いて、ふぅ、と息をついた。

「さっき憂杏が来てな。桂枝と一緒に、ナスル姫のところに行っている」

危うく朱夏は、お茶のカップを落としそうになった。
何とか落とさず、机に戻す。

「え、え? えっと、桂枝と一緒に? えっと、どうするとか、決めたってことですか? 父上には、何か言いましたか?」

「ああ。ナスル姫のところに行く前に、あ奴の考えを聞いた。お前と夕星殿が、憂杏に打診したようだな。あ奴のあんな真剣な顔を見たのは、久しぶりだ」

どこか嬉しげに言う炎駒に、朱夏は食い入るように乗り出した。
急展開だ。

「何て言ってました? もしかしてそれ、桂枝にも言いました? 桂枝と一緒にナスル姫様のところに行ってるってことは、桂枝にも言ったってことですよね? 桂枝、大丈夫でした? 卒倒しませんでしたか?」
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