こちら新宿中央署刑事課
「……」


「私は前島の元側近で、違法な株の買占めはまずいことを散々申し上げたのですが、前島は元々ワンマン社長で人の意見を聞き入れない人間なので、仕方なくそうしました」


 淹れてあったコーヒーを一口啜った坂野が、


「では、あなたはあくまで前島社長の指示で他社の株を不正に買占め、TOBに走ったと?」


 と訊く。


「ええ。本来なら金融商品取引法違反ですが、罰則も含めて社長は私たち社員にやらせたんです。泥を被(かぶ)るのも当然私たち下の者でしたし」


「つまり時季外れの株主総会や、異例とも言える自社の資産公開、株の買占め、それにフロント企業である村川グループの人間たちと組んでやり抜いたありとあらゆる悪事は、我々警察が推測していた通り、あの社長の仕業だったと?」


「ええ、間違いありません。私が重要参考人として警察署に赴(おもむ)き、事実関係を全てお話しても構いませんので」


「では、あなたにはこれから署まで来ていただきます。大丈夫です。身の安全は保障いたしますので」

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