独身マン
「てか、私気付かなかったし!」



それを聞いて、さらに美紀子の笑いは激しくなった。



「虚しすぎるー!!」



ウケねらいでやったつもりの『Re:R:eReのRe』も気付かれなかったのは虚しいが、今こうやって女共にバカにされている正義も虚しい。



そんな中、拓也はスーツの内ポケットから煙草ケースとライターを取り出すと、一本の煙草を抜いて、口にくわえた。



そして「ふ~ん」という。



本当は必死に笑いをこらえている。 が、ココでは冷静さを保とう。 それに、ちょっぴり人を信用できなくなりそうだ。 そして煙草に火をつけた。



「・・・。 さえちゃんモテモテじゃん?」


「イヤー。 あの人は私は好みじゃないよ。 ハデな女が好きなんだもん。 美紀子さんみたいな、キレイなお姉ちゃんがいいんだよ」



美紀子は笑いながら首をかしげた。



「え~。 そうかなぁ?」


「そうだよ」


「でもさぁ~。 軽そうな女に見られて、チャラ男しか寄って来んのよ。 これが」


「だったら尚更だよ。 田端さん言ってたよ? “え? 俺チャラ男?”って」


「なにそれー!」



美紀子はもう、大爆笑。



「ミキさん。 笑いすぎだよ・・・」



でも拓也も笑いをこらえている。



するとさえは、「ふ~」と息を吐いて、中身のないどんぶりの底を、箸でつついた。
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