独身マン
次の日。



昼前に、正義は両親と3人で父方の親族の家に行った。



ベルを鳴らすと、祖母の「は~い。 入って入って!」という大きな声が聞こえてきた。 



そしてドアが開くなり、笑顔の祖母はいう。



「おぉ~。 明けましておめでとう!」


「おめでとうございます」


「ホレ! もう皆きとるぞ! はよ入れや」



小さな折れ曲がった身体で、正義の腕を力強く引っ張ってくる。



(いててて、痛いし・・・)



靴もきれいに脱げないまま、無造作に脱ぎ捨てて家に上がる。 そして後から入ってきた母が、正義の靴をキレイに整えていた。 



「明けましておめでとう」


「あ~。 どうもー・・・。 おめでとうございます」



部屋の中に入ると、伯父と伯母がそれぞれ適当に挨拶をしてきた。



「ホレ! 座って座って!」



祖母は座布団を一枚正義に押し付けてくる。 田端の家の女の血の気が多いのは、この祖母からだろうか。 いつだって他のみんなとは違う行動をとってくる。



「遠慮せんで。 ホレ、暖房の近くに座れ!」


「あ、うん。 ありがとありがと」



言われるままに、みんなが輪になる大きな和の部屋に入った。
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