独身マン
来ていたのは父の妹夫婦とその息子。


※ちなみにこの家は父の兄夫婦の家。




父の妹夫婦は正義の顔を見て言う。



「正義君、明けましておめでとう」


「おめでとうございます」


「そうそう、今年の4月に大樹が結婚するんだよ~」



そう、うれしそうな顔したハイテンションな女は、正義の叔母さん。



正義はこの叔母が嫌いだった。



(ちなみに大樹は今年24才になる正義の従弟。 顔はぴか一不細工だが、今どきの派手な若者だ。 しかし性格は親族で1番まともなような気がする)



「4月だよ、4月~。 桜ちってんじゃん!」


「はぁ・・・」



叔母はうつ病だった。 宇宙のかなたから地底奥深くまで、上から下までひたすら話しつづける。 誰も彼女を止められない。 すでに息子自慢のオンパレード劇場が、30分前から開園していた。 たとえ不細工だろうと、自分の息子は可愛くてたまらないのだろう。 早口の甲高い声でナレーションを続ける。



「でも~、大樹の彼女が変わってるんだって~。 結婚なんかー、まだ早いじゃん? でも向こうの親がせかすからぁ」


「母さんうるさいよ」



大樹はそんな母にテンテコマイ。 正義は「ははは」と苦笑いで、大樹の隣に座った。



「だってぇ、正義君もまだ結婚してないじゃん? それに友則クンだってぇ」



友則・・・。 それは兄夫婦の、32才になる正義の従兄。 そういえば姿が見えない。



「だからー、決まっちゃった事は仕方が無いけどー、家庭を持つって事は大変なんだからねー! お母さんたちだって生活あるし、まだ藤美だって20の学生なんだからー」



藤美も従妹。 彼女は人見知りが激しい性格で、こういった集まりには滅多に顔をださない。
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