独身マン
「あそこの職場で俺の力は発揮できない。 こんな所で俺の全てが分かるはずも無い」



仕事を辞める度に友達にはそう言ってきた。



「そーだそーだ! 今日は俺たちのおごりだからたくさん飲め!」


「若いうちは色々体験しておかなくちゃね」



最高の仲間だ。 友達もそのたびに俺を持ち上げる。 所詮、俺の極少人数のツレなんてみんな腰の低い影の薄い野郎共ばかり。



「やるならやっぱ自営業だろ? 俺たちはへこへこするよりも社長になるべき男だ!」


「そーだそーだー!」



そんな人間が集まって強がっている。 虚しいと思いながらも、それ以上の何かを得る力など俺にはなく、結局はじけたいと思いながら、ツレの前でしかムードメーカーな男になれない。



「お前は有望だ。 こんなところでオチこぼれるなよ」



ありもしない力で何ができるというのか。 俺は・・・。
< 213 / 258 >

この作品をシェア

pagetop