独身マン
完璧シカトだ。
さえの心はとても繊細だから深く傷ついた。
(あぁ、なんて嫌な女なの?!)
さえは気分を害したが、わざと笑顔を振り撒いて事務所を後にした。
外へ出ると拓也が言う。
「まぁ、みんなイイ人ばかりだから」
(アンタにはね)とすかさず心の中でツッコミをいれるさえだが、表面では「そーですか!」と元気良く答えた。
「美人おーい(多い)ですよね!」
「う~ん? さぁ」
「美人ですよ! うらやましーなぁ~」
「あまり見本にしないほうがいいよ」
誰のことだろうなって、さえは思ったけど、まぁ、あの女共か、と解釈した。
「じゃ、十分前には戻ってきてね」
「はーい」
駐車場で拓也と別れ、さえはマイカーに乗り込む。
くるくると午前中の出来事が鮮明に頭の中を駆け巡った。
(・・・意地悪な人いるし、わたし、やっていけるかなぁ)
自身を無くしてきたさえ。 しかしだんだん怒りも湧き出てきた。
(あ゛ー! ムカツクゥウゥウゥウ!!)
友達はさえを蜘蛛女という。