門限9時の領収書
男子だけではなく女子にも共通のテーマらしい――『したんだ?』という直球の言葉と、
『は、無理、恥ずかしいじゃん!』と、叫ぶうぶな見解。
豪快に笑う女子高生の軍団を前にして、真っ赤になってしまった幼い少女を見た時、
確かに洋平は幸せな気持ちになった。
そして、キスはしたのかと詰問され、『恥ずかしい』と、否定する結衣にほっとした。
そんな感じの放課後デート。
好きだし
……。
そう、進展は遅いものの結衣は特別枠レベルの無垢な訳ではないのだと、
人並みに意味は知っていることが分かっただけ収穫があったと思えた。
つまり、恋人のステップを知った上でまだ無理なのだから、
そこを若いからと急ぎたくはない。
サテンのような肌――触ったら自分だけの輪郭に馴染みそうな大切にしたい人。
恋愛らしい蜜度がなかろうが、二人の仲は確実に密度が増しているから大丈夫。
ここまでくれば洋平は逆に極めたくなっていた。
彼女に合わせる彼氏を演じてやろう。
わざと紳士になってやろう。
――大人ぶった幼稚な交際をしてしまいたい。
自分は経験人数を自慢するクラスメートたちとは違う愛し方が出来るのだという対抗心であり、
同級生とは異なる愛を貫き通したいという見栄でもある。
従って、浅はかな洋平は結衣の心の中に好きな人として居られるなら満足だった。
そんな彼、実は今日も門限より早く別れたんだとか。
馬鹿な正義。
こんな風に真心を示したい自分。
ロマンチストではないから、世間が喜びそうなドラマチック名言は口にできないけれど、
爆笑させるつまらない冗談なら任せてほしい。
薄っぺらい関係を探究すれば、きっと一ミリが重なって厚い熱い愛が完成するはずだから、
今の洋平は下積み時期。
もちろん結衣の笑声が原動力。
結衣が居るから毎日が鮮やかに染まる不思議。
――これはなんというミラクル思想と白けることなかれ、――幸せなどなくて、自分が慶福だと思うことで幸せを作り出すのかもしれない。
カジュアルに浮ついた感じが望ましい洋平なりの恋の育て方。