“スキ”を10文字以内で答えよ
――数分後、先生は右手に小さなビニール袋を提げて帰ってきた。
「どこに行ってたんですか」
「薬局」
それは今行く必要があったのだろうか。
もう時計は既に6時を回っていて、本来なら会社に居る時間だ。
先生の気まぐれな買い物の所為で私は………
「ひゃっ?!」
右頬に、いきなり何か冷たいものに触れられた。
何なの?!
「ああ、びっくりした?」
驚いて右を向くと、ニヤリと意地の悪そうな笑みを浮かべた先生が、両手で湿布を持っていた。
「え?先生、何で湿布なんか……」
「お前の顔、腫れすぎだろ。見てて痛いから買ってきて貼ってやってんだろ?」
「そんなの頼んでいません」
「黙って大人しくしてろ」
そう言って、また湿布を右頬に近づけてくる。
自分が小さい子供みたいに思えてきて、何だか情けないし、悔しい。
「自分で貼れますから渡してください」
なるべく先生の顔を見ないように。
右手だけ先生の方へ差し出す。