“スキ”を10文字以内で答えよ



「何だよ……。そんなに嫌か?それとも、さっき変な声上げたから?」



喉の奥でククッと小さく笑い声を出し、「こっち向け」と強引に向かい合わせた。



言っても何もならない。

ここは大人しく従って、ちゃんとお礼を言うべきだ。

それが人間として当たり前の事なんだから!







自分に言い聞かせながら、彼の方を向くと、思いの外先生との距離が近すぎた。




「……っ、近い!!」

「黙ってろってさっき言いましたよね?奈神さん」

「何でその喋り方……っ、冷た……」





ベタリと湿布を貼られ、一瞬びくりと肩を震わす。

冷たさと、染み込んでいくような痛み。


だけど何故か、それが心地好い。




「最初からそうしてれば良かったんだよ」



湿布を几帳面に広げていく先生の声が、耳に直接流れてくる。

執拗に右頬を触る先生の肩を押して、シートベルトを締め直し、また窓の方へと顔を向けた。




「何怒ってんだよ」

「怒ってないです」



少し、驚いただけです。



なんて、素直に言える訳も無く。


先生の視線が私から前へと戻ったのを確認すると。





「ねぇ、」



と、訊ね、先生のシャツの裾をギリッと掴む。




「どうもありがとうございました」





早口でそう言うと、頭にふわっと手が置かれた。




「どういたしまして」






……やっぱり、私は先生が嫌いだ。


こういう時に優しくされるのが、

私には一番辛い。


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